傷病手当金とは?(2026.6.29)
傷病手当金とは?病気やケガで働けないときにもらえる健康保険の給付です
「病気やケガで仕事を休むことになったけれど、お給料が出ない…」
このようなときに、健康保険から生活保障として支給されるのが「傷病手当金」です。
傷病手当金は、簡単にいうと、仕事以外の病気やケガで働けなくなり、会社を休んで給与が出ないときに、健康保険から一定額が支給される制度です。
たとえば、次のようなケースで対象になる可能性があります。
・病気で入院し、しばらく仕事を休むことになった
・ケガで自宅療養が必要になり、出勤できない
・メンタル不調などで医師から休職が必要と判断された
・手術後の療養で、一定期間働けない状態になった
ただし、休めば必ずもらえるものではなく、いくつかの条件があります。
傷病手当金を受けるための4つの条件
傷病手当金は、次の4つの条件をすべて満たした場合に支給されます。
業務外の病気やケガであること
傷病手当金の対象になるのは、仕事以外の理由による病気やケガです。
たとえば、休日中のケガ、私生活での病気、自宅での療養などが該当します。
一方で、仕事中の事故や通勤途中のケガなどは、原則として健康保険の傷病手当金ではなく、労災保険の対象になります。
仕事ができない状態であること
単に「体調が悪い」というだけではなく、医師の意見などをもとに、これまで行っていた仕事ができない状態であることが必要です。
この状態を「労務不能」といいます。
たとえば、事務職の方、現場作業の方、運転業務の方では、仕事内容によって「働ける・働けない」の判断が変わることがあります。
そのため、傷病手当金の申請では、医師による証明が重要になります。
連続して3日間休み、4日目以降も働けないこと
傷病手当金は、仕事を休んだ初日からすぐに支給されるわけではありません。
まず、連続して3日間休む期間が必要です。
この3日間を「待期期間」といいます。
傷病手当金が支給されるのは、待期期間が完成したあとの4日目以降です。
たとえば、月曜日から木曜日まで休んだ場合は、次のように考えます。
月曜日:待期1日目
火曜日:待期2日目
水曜日:待期3日目
木曜日:支給対象になる可能性あり
この待期期間には、有給休暇、土日、祝日などの会社の休日も含まれます。
ただし、待期期間は「連続して3日間」である必要があります。
2日休んで、3日目に出勤した場合は、待期期間は完成しません。
休んだ期間について給与が支払われていないこと
傷病手当金は、働けずに給与が出ない期間の生活保障です。
そのため、会社から給与が通常どおり支払われている場合は、原則として傷病手当金は支給されません。
ただし、給与が一部だけ支給されている場合には、傷病手当金の額より給与が少なければ、その差額が支給されることがあります。
傷病手当金はいくらもらえる?
傷病手当金の金額は、ざっくりいうと、お給料の約3分の2程度が目安です。
正確には、次の計算式で計算します。
支給開始日前の継続した12か月間の標準報酬月額の平均 ÷ 30日 × 3分の2
ここでいう「標準報酬月額」とは、健康保険料を計算するときに使う給与の区分のようなものです。
実際の手取り額ではありません。
計算例
たとえば、標準報酬月額の平均が30万円の場合は、次のようになります。
30万円 ÷ 30日 = 1万円
1万円 × 3分の2 = 約6,667円
この場合、傷病手当金の日額は、目安として1日あたり約6,667円です。
1か月まるごと支給対象になる場合は、次のようになります。
約6,667円 × 30日 = 約20万円
ただし、実際の金額は、標準報酬月額、給与の支払い状況、加入期間などによって変わります。
いつまでもらえる?
傷病手当金の支給期間は、同じ病気やケガについて、支給を受けた期間を通算して1年6か月までです。
以前は、支給開始日から1年6か月が経過すると、その間に復職していた期間があっても終了する仕組みでした。
しかし、2022年1月1日から制度が変わり、現在は、実際に傷病手当金が支給された期間を通算して1年6か月まで受けられる仕組みになっています。
そのため、療養と復職を繰り返すようなケースでも、支給対象となった日数を通算して判断されます。
退職後ももらえる場合があります
退職したら必ず傷病手当金が終わる、というわけではありません。
退職後も引き続き傷病手当金を受けられる場合があります。
主な条件は、次のとおりです。
・退職日までに継続して1年以上、健康保険の被保険者期間があること
・退職日時点で傷病手当金を受けている、または受けられる状態であること
・退職日に出勤していないこと
・退職後も同じ病気やケガで働けない状態が続いていること
特に注意が必要なのは、退職日に出勤してしまうと、退職後の継続給付を受けられない可能性があるという点です。
退職前後で傷病手当金の申請を考えている場合は、退職日の扱いについて事前に確認しておくことをおすすめします。
申請には会社と医師の証明が必要です
傷病手当金を申請するには、通常、申請書に次の内容を記入・証明してもらいます。
・本人が記入する欄
・会社が証明する欄
・医師など療養担当者が証明する欄
会社は、勤務状況や給与の支払い状況を証明します。
医師は、病気やケガの状態、働けなかった期間などを証明します。
そのため、申請する際は、会社と医療機関の両方に手続きが必要になります。
有給休暇を使った場合はどうなる?
有給休暇を使った日は、会社から給与が支払われるため、原則としてその日は傷病手当金の支給対象になりません。
ただし、待期期間の3日間については、有給休暇を使っていてもカウントされます。
つまり、最初の3日間を有給休暇で休んだ場合でも、連続して3日間休んでいれば、待期期間は完成する可能性があります。
パート・アルバイトでも対象になる?
パート・アルバイトの方でも、勤務先で健康保険に加入している場合は、傷病手当金の対象になる可能性があります。
一方で、国民健康保険に加入している方については、会社員の健康保険と同じ形の傷病手当金が必ずあるわけではありません。
加入している保険の種類によって扱いが変わるため、自分がどの健康保険に加入しているかを確認することが大切です。
会社が注意したいポイント
従業員から傷病手当金について相談を受けた場合、会社としては次の点を確認しておくと安心です。
・業務上や通勤中のケガではないか
・いつから休んでいるか
・連続した3日間の待期期間があるか
・給与を支払っている期間があるか
・有給休暇を使っているか
・退職予定がある場合、退職日の出勤有無はどうなるか
・医師の証明が取れる状態か
傷病手当金は、従業員の生活を支える大切な制度です。
一方で、申請内容に不備があると、支給までに時間がかかることがあります。
休職や退職が関係する場合は、早めに確認しておくことが大切です。
まとめ
傷病手当金は、病気やケガで働けなくなったときに、健康保険から支給される生活保障です。
ポイントは次のとおりです。
・仕事以外の病気やケガが対象
・医師の証明により、仕事ができない状態であることが必要
・連続3日間の待期期間後、4日目以降が支給対象
・給与が出ている日は原則として支給されない
・支給額はおおむね給与の3分の2程度
・支給期間は通算して1年6か月まで
・退職後も条件を満たせば継続して受けられる場合がある
病気やケガで働けなくなったときは、無理をして判断せず、会社・医療機関・加入している健康保険に確認しながら手続きを進めましょう。
当事務所では、傷病手当金に関するご相談や、休職・復職・退職時の労務対応についてもサポートしております。
お困りの際は、お気軽にご相談ください。
